行訴・執行停止 vs 仮の義務付け・仮の差止め

行政法

執行停止は取消訴訟。仮の義務付け・仮の差止めは義務付け訴訟(申請型・非申請型どちらでもOK)・差止め訴訟でしたね。
で、執行停止も、仮の義務付け・仮の差止めも、「仮の救済」でしたね。判決を待っていたら間に合わなさそうだから、裁判所が行政庁に「やめなさい!」「やりなさい!」と命じてくれるもの。

この2つって似ているのに、細かい部分が全然違いますよね。
たとえば有名(?)なのは、「重大な損害」なのか「償うことのできない損害」なのか。「理由がないとみえるときにできない」のか、「理由があるとみえることが要件」なのか。

どうして似ているのに色々違うんだろう?まあそもそも最初のスタート地点が違う(取消訴訟か、義務付け訴訟か)んだけど…

と考えていて、気づきました。
「役所がすでにしたことを止める」か、「役所がまだしていないことに介入する」かというスタート地点の違いのせいで、色んな違いが生まれていることに!

条件の違いはすべて、この一点から生まれてるんですね~!

まずはスタート地点

  • 執行停止は取消訴訟。すでに出た処分を対象とします。
    すでに駅を出発して走り出した列車にブレーキをかけるイメージ。
  • 仮の義務付け・仮の差止めは、義務付け・差止め訴訟。まだない処分を対象とします。
    まだ動いていない列車に走れと命令する、あるいは今まさに発車しようとしている列車を、駅のホームから出さないように封じ込めるイメージ。

執行停止は行政庁が自分で「よし、出発しましょう」と判断したことなんですね。
しかし仮の義務付け・仮の差止めは、行政庁が自分で「出発だー」とも思っていないし、「出発中止だー」とも思っていなかったところに、裁判所が介入する。

つまり、裁判所の行政権に対する「介入度」がかなり違います。

損害のハードルの違い(重大 vs 償えない)

  • 執行停止:重大な損害を避けるため緊急の必要があること
  • 仮の義務付け・差止め:償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があること

「償うことのできない損害」は、金銭賠償などで後から回復することが物理的・社会的に不可能な、より深刻な損害を指します。
役所がまだやっていないことに対して、裁判所が「〜せよ」「〜するな」と命じるのは行政権への介入度が高いので、より厳しい条件が課されているということなんですね。

「理由の有無」の表現の違い

  • 執行停止(消極要件):「本案について理由がないとみえるとき(負け戦)は、することができない」。
  • 仮の義務付け・差止め(積極要件):「本案について理由があるとみえるとき(勝ち戦)でなければ、することができない」。

執行停止は「原則OK・例外NG」ということですね。
仮の義務付け・差止めは「原則NG・例外OK」。

行政権への介入度の差がそのまま条文に反映されているということになります。

誰が裁判所を納得させるか(疎明責任)の違い

  • 執行停止:行政側(被告)が「この裁判は原告の負けですよ(理由がない)」を疎明しなければならない。疎明できなければ、原則として停止が認められます。
  • 仮の義務付け・差止め:原告側(国民)が「私はこの裁判に勝ちます(理由がある)」を積極的に疎明しなければならない。疎明できなければ、認められません。

執行停止を行政側が疎明するというのがなんだか直感的ではない気がしますが、これは消極要件の裏返しなんですね。
「負け戦でない限り認める」設計だから、「負け戦だ」と主張する行政側が立証する。

まとめ:比較表

比較項目執行停止仮の義務付け・仮の差止め
対象となる訴訟取消訴訟(すでにある処分)義務付け・差止め訴訟(まだない処分)
損害の程度重大な損害償うことのできない損害
要件の構造消極要件(負け戦でなければ可)積極要件(勝ち戦に見えれば可)
疎明責任行政側が「理由なし」を疎明原告側が「理由あり」を疎明
基本的な性格ブレーキ割り込み命令

『すでにある処分』を止めるのは比較的やさしいけれど、『まだない処分』を作らせたり事前に封じたりするのは、行政の自主性を守るために凄くハードルが高い」とイメージするとよさそうですね!

ちなみに行政は「はぁ!?公益がめちゃくちゃになるんですけど!?」と言い返すことが出来れば、執行停止も仮の義務付け・仮の差止めも阻止できます。これが「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがある」ときで、執行停止も仮の義務付け・仮の差止めも共通です。

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