理解しているつもりでも、問題文を読むとさっぱり分からなくなる論点第一位!先取特権!テキストに書いてある内容と、問題集で求められるレベルが全然違うやないの!
今回私がつまずいたのは、こういう問題です。
動産売買の先取特権者と、転売代金債権の譲受人(対抗要件具備)、一般債権者(差押債権者)との優劣。動産売買の先取特権者はどちらに勝ち、どちらに負けるか?
先取特権は…三種類あって…引渡し前に差押え…優先弁済と物上代位…みたいなキーワードは頭に浮かぶんですけど、これはいったいどういう場面なんでしょうか。
基本的なことからおさらいしていきたいと思います。
まずは先取特権のおさらい
会社に行ったら突然潰れていて、ドアには取引先から「○○代金120万円すぐに払ってください」という張り紙が!え、私の今月の給料は!?
みたいなケースで、従業員の給料は特に保護すべき債権として守ってあげましょう、という制度でしたね。これは雇用関係の先取特権です。
実は占い師の仕事では結構お馴染みだったりします。人のピンチの話ばかり聞く仕事ですからね~。(とはいえ雇用関係以外の先取特権はまったく聞いたことがなかったんですけど)
一般先取特権、動産先取特権、不動産先取特権の3種類でしたね。
上の雇用関係の先取特権は、一般先取特権の一種です。子の監護の費用もこれですね。
今回の問題文の主人公は「動産売買の先取特権者」です。
動産売買の先取特権者と、転売代金債権の譲受人(対抗要件具備)、一般債権者(差押債権者)との優劣。動産売買の先取特権者はどちらに勝ち、どちらに負けるか?
動産先取特権として挙げられている債権は次の通り。
- 不動産の賃貸借
- 旅館の宿泊
- 旅客または荷物の運輸
- 動産の保存
- 動産の売買
- 種苗または肥料の供給
- 農業の労務
- 工業の労務
なので主人公は恐らく、「時計を100万円で売ったけどまだ代金をもらっていない時計屋」みたいな感じでしょう。
ちなみに不動産賃貸の先取特権は、賃料を滞納されている大家が、賃借人が部屋に持ち込んだ家具や備品(動産)に対して持つ権利。
旅館宿泊の先取特権は、宿泊代を払わない客が持ち込んだ手荷物(動産)に対して持つ権利です。
具体的なストーリー
『動産売買の先取特権者と、転売代金債権の譲受人(対抗要件具備)、一般債権者(差押債権者)との優劣。動産売買の先取特権者はどちらに勝ち、どちらに負けるか?』という問題に時計屋をあてはめるとこうなります。
1. 時計屋のストーリー
- 売買契約と権利の発生: 時計屋AはBに100万円で時計を売りましたが、Bは代金を支払っていません。このとき、売主Aは当然に、その時計に対して「動産売買の先取特権」という担保物権を取得します。
- 転売と引渡し: Bはその時計をさらにCに転売し、現物を引き渡してしまいました。この時点で、Aは時計そのものを差し押さえて競売にかけることはできなくなりました。
- 物上代位したい: Aに残された手段は、Bが転売先Cに対して持っている転売代金債権を横取りすること。物上代位ですね。
ただ、これは「時計屋A視点のストーリー」なのです。
この問題には他に2人登場人物がいます。債権譲受人Xと、一般債権者Yです。
2. 対 債権譲受人(時計屋Aの負け)
【ストーリー】 Bには別の人(X)への借金がありました。Bは時計の転売代金を受け取る権利(対C債権)をXに譲り渡し、確定日付のある通知をCに出して、債権譲渡の対抗要件を完璧に備えました。後からこれを知った時計屋Aが「いや、その代金は私の時計の代わりでしょ」と差し押さえようとした場面です。
- 結果: 時計屋Aの負け。
- 理由: 譲受人Xは、Bとの正当な取引(債権譲渡)によってその権利を手に入れました。動産の先取特権は登記がなく外部から見えないため、Xはまさかその債権に先取特権が隠れているとは予想しません。なので法律は取引の安全を重視し、「Xが対抗要件を備えているならそちらを優先しましょう」ということになっています。こういうケースで先取特権を優先させるとなると、誰も債権を買い取らなくなりますもんね。
3. 対 一般債権者(時計屋Aの勝ち)
【ストーリー】 Bには別の人(Y)への借金もありました。YはBがCに時計を売ったことを聞きつけ、Bの一般財産を差し押さえる一環として、たまたまその転売代金債権を差し押さえました。時計屋Aも「いや、その代金は私の時計の代わりでしょ」と言って、代金がBに支払われる前に差し押さえを申し立てました。
- 結果: 時計屋Aの勝ち。
- 理由: 差押債権者Yは、譲受人Xのように「その債権そのものが欲しくて取引」をしたわけではなく、単に差押えの手続きとして掴んだ債権がたまたま時計の転売代金債権だっただけです。一方、時計屋Aは法律によって「この時計(その代わり)から優先的に弁済を受ける」という強力な物権(優先権)を与えられています。時計屋の権利には法律上の優先順位が最初から付いているので、単なる一般債権者であるYには勝つことができます。
つまり、
- 相手が「譲受人(対抗要件あり)」なら、「取引の安全」キーワードを思い出し、負け。
- 相手が「一般の差押債権者」なら、「物権の優先的効力」キーワードを思い出し、勝ち。
という考え方をすればよさそうです。
ちなみになんですが、差押債権者Yが先に転売代金債権を「差押え」したことは、物上代位を封じる「払渡し」には該当しません。
動産先取特権って結構弱い…
こうやって見ると、動産先取特権って弱いですね~。そもそも引渡しで消滅しちゃいますしね。
「登記(というか公示)のない弱い担保物権」というイメージを持っておかないといけなさそうです。
それにひきかえ、不動産先取特権は登記が出来るので、かなり強い!
不動産保存や不動産工事の先取特権は、それより前に設定されていた抵当権よりも優先してもらえちゃいます。(その工事によって不動産の価値が維持・向上できるから、先順位抵当権者も恩恵を受ける、という理由らしいです)
動産先取特権は「いつの間にか消えてしまう(※)可能性がある、見えない権利」という意味で弱く、不動産先取特権は「登記によって強力に守られ、時には抵当権の順位さえひっくり返す強い権利」という違いがあるんですね。
※動産先取特権が「いつの間にか消えてしまう」可能性があるというのは、引渡しに占有改定も含まれるからです。
外観が変わらないのに権利が消滅!横暴!
