義務づけ訴訟には、取消訴訟の拘束力の規定は準用されてるけど、第三者効の規定が準用されていない(行訴32条、33条)。
これってなんでなんでしょう?救済手段として義務付けが必要なくらいの事態なのだから、第三者にも主張出来ないと困ってしまうのでは…?
裁判の目的を考えてみると…
1. 義務づけ訴訟に拘束力(33条)が準用される理由:役所を動かすため
義務付け訴訟の目的は、裁判所が行政庁に対して「この処分をせよ」と命令することです。
- 拘束力とは: 判決が下された際、その内容に従って行動するよう、処分をした行政庁や関係行政庁を縛る力のこと。
- 義務付け訴訟での必要性: 裁判所が「許可を出しなさい」という義務付け判決を出しても、役所がそれに従わなければ裁判の意味がありません。そのため、判決の趣旨に従って「改めて処分をする義務」を課す拘束力の規定は、義務付け訴訟においても不可欠なのです。
2. 第三者効(32条1項)が準用されない理由:性質が異なるから
私は上で「救済手段として義務付けが必要なくらいの事態なのだから、第三者にも主張出来ないと困ってしまうのでは?」と書きました。
実はこれ、「第三者効」の正しい意味ではないのです。
「第三者効」は行政事件訴訟法32条(取消判決等の効力)において規定があります。基本的に「取消訴訟用の用語」なのですね。
(こういうことがあるので、やっぱり初心者のうちは分からないことがあったら六法を確認したほうがいいですね~)
- 第三者効とは: 処分の取消判決が出たときに、その処分の効力が「遡って消滅した(形成力)」という結果を、原告だけでなく、誰に対しても主張できる効力のことです。
- 取消訴訟特有の力: 第三者効は取消判決によって処分の効力を世の中から消し去る「形成力」の延長線上にあるもの。
- 義務付け訴訟との違い: 義務付け訴訟の判決は、何かを「消し去る(形成する)」ものではなく、行政庁に対して「〜せよ」と命令する「命令判決」という性質を持ちます。
- つまり、取消訴訟のように「もともとあった処分をなかったことにする」という話ではないんですね。なので、形成力を前提とした「第三者に対しても消滅の効果を及ぼす」という32条1項の仕組みは、理論上なじまないということです。
まとめ:覚え方のポイント
| 規定 | 内容 | 義務付け訴訟 | 理由のイメージ |
|---|---|---|---|
| 拘束力(33条) | 役所を判決に従わせる | 〇 準用される | 判決の通りに「やらせる」ために絶対必要。 |
| 第三者効(32条1項) | 世の中から処分の効力を消す | × 準用されない | 判決で「消す」わけではなく、新しく「作らせる」話だから。 |
義務づけの訴えには「『やれ!』と強制する力(拘束力)は必要だけど、取消訴訟のように『最初からなかったことにするマジック(第三者効)』の規定は使わない」とイメージしておくと、試験でも間違えなくなりそうです。
ここまでは、義務づけの訴えのお話でした。
では、無効等確認の訴えにもやっぱり「第三者効」はないんでしょうか?
第三者効は「無効等確認の訴え」にも準用されない
判決そのものの第三者効(行訴法32条1項)は、「無効等確認訴訟」にも準用されていません。
試験対策としては「判決の第三者効は取消訴訟(および一部の例外)特有の強力なパワー!」と覚えておくのがよさそうです。
1. なぜ無効等確認訴訟には「第三者効」がないのか?
「第三者効」は、先ほども述べたように、判決によって処分の効力を世の中から遡って消し去る「形成力」という性質に基づいています。
- 取消訴訟(形成訴訟): 本来は有効(公定力がある状態)な処分を、判決というマジックで「最初からなかったこと」に書き換えるため、その劇的な変化を世の中全員に認めさせる「第三者効」が必要です。
- 無効等確認訴訟(確認訴訟): そもそも処分に「重大かつ明白な瑕疵」があり、最初から無効(公定力が発生していない)であることを、裁判所が「確かにこれは最初からゴミ同然(無効)ですね」と確認するだけのものです。
- 最初から無効なものは誰に対しても無効なので、わざわざ「第三者にも効力を及ぼす」という特別な規定を置く必要がない、ということなんですね。
2. 試験で狙われそうな例外:執行停止の第三者効
ここが非常に間違いやすいのですが、「執行停止」については無効等確認訴訟でも第三者効の規定が準用されています。
- 判決の第三者効(32条1項): 無効等確認訴訟には準用されない。
- 執行停止の決定などの第三者効(32条2項): 無効等確認訴訟にも準用される。(※義務付け訴訟ではないですよ。無効等確認訴訟のお話です!)
「とりあえず今すぐ止めなきゃ!」という執行停止については、無効等確認訴訟の段階でも世の中全体に対してその効力を止める必要があるため、この規定だけは準用リストに入っているのですね。
まとめ:覚え方のコツ
| 訴訟の種類 | 判決の第三者効(32条1項) | 執行停止の第三者効(32条2項) |
|---|---|---|
| 取消訴訟 | 〇 認められる | 〇 認められる |
| 無効等確認訴訟 | × 準用されない | 〇 準用される |
| 義務付け・差止め | × 準用されない | × 準用されない(執行停止自体準用なし) |
「第三者効」は、判決の効果としては「取消訴訟特有」という覚え方でいいのですが、「ただし、執行停止だけは、無効等確認でもみんなに効く」というイメージですね。
ちなみに義務付け・差止めの訴えではそもそも「執行停止」という概念が馴染みません。
執行停止は、一度動き出した処分の「ブレーキ」を踏む制度。
差止め訴訟の場合、そもそもまだ「車(処分)」が走り出していない(生まれていない)状態なんですね。
差止め訴訟で裁判の結果を待っていたら手遅れになるような緊急事態がある場合は、「仮の差止め」を使います。
この場合の要件は「重大な損害」ではなく、よりハードルの高い「償うことのできない損害」でしたね。
執行停止と仮の差止めについてはこちらでもまとめたので、よかったらご覧ください。


