行訴・原処分主義を「なぜか」で理解しましょう

行政法

行政事件訴訟法10条2項「原処分主義」

処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。

めちゃくちゃ難解じゃないですか?何言ってるのか分からない!

噛み砕いて言うと…

難解に見えるのは、条文の中に「原処分(大元の処分)」と「裁決(審査請求の結果)」という2つのステップがごっちゃに書かれているからなんですよね。

  • 原処分: 役所が私に下した最初のパンチ(営業停止命令など)。
  • 裁決: 私が「今のパンチは不当だ!」と不服を申し立てたのに対し、審査庁が「いや、あのパンチは正当だ」と判定した、レフェリーの判断。

これを使って条文を読み替えてみると、こんなふうになります。

《最初のパンチ取消しの訴え》と
《「いや、あのパンチは正当だ」というレフェリー判断の取消しの訴え》
のどちらも提起することができる場合には、
《レフェリー判断取消しの訴え》においては、
最初のパンチの違法を理由として取消しを求めることができない。

この条文のストーリーの主人公は、営業停止命令を受けただけでなく、既に審査請求をして棄却されているわけですね~。(これが分かりにくいですよね)

その状況で、《最初のパンチ取消しの訴え》と《レフェリー判断取消しの訴え》両方提起できる場合

  • 最初のパンチが不当だと言い張りたいなら《最初のパンチ取消しの訴え》を起こしなさい
  • 《レフェリー判断取消しの訴え》を起こすなら最初のパンチについて文句言ってはいけませんよ

という内容です。

え!?《レフェリー判断取消しの訴え》で最初のパンチについて文句言っちゃいけないの!?

じゃあ何に文句を言う場なわけ!?
私はねちねちと最初のパンチについて文句を言いたいんですけど!

「原処分主義」という交通ルール

行政事件訴訟法10条2項は、裁判における「不満を言う相手の分担」を決めてるんですね。

  • 処分の取消しの訴え: 「大元のパンチ(原処分)そのものが違法だ!」と文句を言うためのルート。
  • 裁決の取消しの訴え: 「レフェリーの判定手続き(裁決)そのものにミスがあった!」と文句を言うためのルート。

そもそもこの条文のストーリーで主人公は営業停止命令を受けただけでなく、既に審査請求をして棄却されているんでしたね。
レフェリーの判定手続(裁決)にミスがあったと言えるなら、審査請求の棄却について文句を言いたいところです。最初のパンチを違法だと主張するより、ミスをあげつらうほうが簡単そうですもんね。
でも棄却裁決について文句を言うルートを選んだら、最初のパンチについては何も言えなくなってしまうのか…そもそも私は最初のパンチに文句があるのに…ぶーぶー。

いったいどうしてこんなルールになってるんでしょう?

実は昔の法律(行政事件訴訟特例法)ではこのルールがなく、処分の取消しの訴えでも、裁決の取消しの訴えでも同じことを主張することができ、判決がバラバラになることがあったようなんです。
それで「最初の処分の文句は『処分の取消訴訟』で、裁決独自のミス(手続き違反など)の文句は『裁決の取消訴訟』で、はっきり分けて言いなさい」というルールが出来たんですね~。

裁決の取消訴訟で主張できるのは「レフェリーの判定手続き(裁決)そのものにミスがあった!」という内容なので、つまり「裁決のプロセス(審理手続き・権限・範囲)のミス(違法)」だとイメージするとよさそうです。

  • 審査請求の手続きに瑕疵があった(例:弁明の機会を与えなかった)
  • 権限のない機関が裁決した
  • 裁決の内容が審査請求の申立範囲を超えていた

主張できないもの

  • 「そもそも営業停止の根拠となった事実が間違っている」
  • 「処分の根拠法令の解釈が誤っている」

こういったものは処分の取消訴訟で主張すべき事柄ということになります。
「裁決について争う裁判で、原処分の悪口はダメ」ということですね。

「裁決プロセスが違法なんですけど!」と主張するのは簡単ですし、裁判所が客観的に判断するのも簡単そうです。
でも「この営業停止命令は違法じゃないですかー!?」と主張するのは大変そうだし、裁判所も行政の処分に介入することになるので慎重にならざるを得ないでしょう。
この交通ルールは、さくっと解決出来そうなものは解決してあげようという一面も持ってるのかもしれませんね。

例外:裁決主義

原則は原処分主義ですが、例外として法律が「裁決の取消訴訟のみで争いなさい」と定めている分野があります。(例:電波法の免許拒否処分)
裁決主義の場合、処分の取消訴訟は提起出来ないので、裁決の取消訴訟ルートのみ。
試験受験者から見るとシンプルで素晴らしい制度に見えますが、自分が裁判所になったつもりで考えてみると、大変かもしれませんね。

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